道がない不動産が存在します。
家を買ったけれど、前の道が実は道ではなかった?
Aさんは1年前、頭金を半分くらい入れて、残りは住宅ローンで念願の一戸建て住宅を手に入れました。
周辺相場よりけっこう割安で出ていたので、100%満足したものではありませんでしたが、それも決め手になりました。
しばらくして、何となく家の前の道はどこが管理しているのだろう?と思い、道のことを調べてみることにしました。
そうすると、思いもかけないことが判明したのです。
いわゆる『道』とは通行するために使用されている専用の土地のことです。
ですから、広い意味では道はそこら中に存在します。
犬やタヌキが通る道も獣道と言って道と言えば道になります。
田んぼの中の道は農道です。
代表的な道は道路法による認定道路です。これは、市役所や、土木事務所等、行政の担当部署に行けば道路法による道路なのかどうかは教えてももらえます。
公道とも言われます。
又、各市町村のWEBサイトにも公開されていることもあります。(全部ではありません。)
又道路法で認定されていないけれど、現実に存在していて、法律的に認められている道はたくさんあります。
道を調べると根拠となる法律が多く、かなりややこしいので混乱すると思います。
住宅を買ったりするときに重要なことは、建築基準法上の道路として認められているかということです。
これを道がある(接道している)と考えます。
これは建築基準法42条に書かれています。
42条1項1号道路から、1項5号道路及び、42条2項道路の6種類の道路が規定されています。
因みに、42条1項1号道路とは、道路法による道路のことで、国道、県道、府道、市道などが代表的です。一般的に公道と言われたりします。
今回、Aさんが自分の家の前の道路を調べたところ、このどれにも該当しませんでした。
しかし、Aさんの家の前には、誰が見ても道にしか見えない道がしっかりと存在します。
住宅もその道に接して、建っています。しかし、書類的には前の道は道ではないということです。
一体どういうことなのでしょうか。
知らべてみると、道に見える前の土地は、個人が所有し、Aさんの持分はありませんでした。
この状態では、ふつうは住宅を建てることはできないはずです。
しかし、このような状態で実際に建っている建物は存在します。
これには理由がいくつか考えられます。
一つは、建築確認をどのように提出したのか?そして現実の建物は、建築確認と同じなのか?違うのか?ということです。
どういうことかと言えば、都市計画区域内で、住宅などの建物を建築する場合は、通常は建築確認という手続きが必要です。
これは、設計図面とその他の必要事項を記入して、担当の行政部署(特定行政庁)や指定建築確認検査機関に事前の確認を受ける制度です。
建築確認後、その内容の通りに建築を行い、完成後、完成検査を受けます。
ただ、過去の建物に多いのですが、この完成検査を受けていない建物が数多く存在します。
行政的にも、それほど、そのことに対して指導やチェックが無かった時期がしばらくあるのです。
そのため、建築確認申請書は提出して、建築確認は受けたけれど、実際はその通りに建築せずに、ひどいときは全く違う建物を建築して、そのまま販売していたという荒っぽい不動産業者もいました。
検査がないのですから、好きにできてしまいます。
さすがに今は、そんなことはないですが、過去の建物を調べていくと結構な確率で見つかります。
因みに検査を受けているかどうかは、市役所の担当部署に行けばすぐわかります。
『建築計画概要書』と併せて検査済み番号を申請してみてください。
こうなってくると、Aさんのケースも可能性は十分考えられます。
その経緯は詳しくはわからないとしても、結果として建築基準法では認められていない建物が建っているということです。
その他に考えられることとして、建築基準法43条2項に該当する場合です。
43条1項では、『建築物の敷地は建築基準法上の道路に2m以上接していなければならない』と規定されています。更に2項ではこの例外規定が書かれています。
どういうことかと言えば、本当は道路に接していなければならないけれど、特別の場合に、道路に接していると考えて、建築を許可してあげましょうという内容です。
かなり例外的な内容であり、個別に認定または許可が必要になります。
ただ、この43条2項は、結構大変で、一度建築は許可されても建て替えの場合は改めて申請をする(お伺いを立てる)必要があります。
Aさんの場合が、どれに当たるのか、又はこれ以外のケースに当たるのかは、これ以上は知らべてみないとわかりません。
ただ、一度こういう不動産を購入してしまうと、いろいろ面倒です。
さらに、将来都合により、これを売却しようとしても、簡単ではないことは想像できるでしょう。
相場より安く買えたと思って喜んでいたAさんでしたが、思わぬ落とし穴に落ちてしまいました。
上記は一つの例に過ぎませんが、安い不動産にはそれなりの理由があることが多いのです。
そして、それを理解して買うのであれば、あまりお勧めはしませんがぎりぎり問題はないです。
ただ不動産業者からの説明も受けても、その内容は抽象的で、かつ専門用語が多いのでわかりにくく、なんとなくわかったつもりで、買ってしまうこともあるようです。
こうなると悲劇ですね。
不動産の購入には注意すべき点がたくさんありますが、道の問題はかなり重要です。
事前にしっかりと確認されることを勧めします。